介護予防は、早期からの運動の習慣付けがカギ
こんにちは 理学療法士のKBです。
現在、ある介護付有料老人ホームで機能訓練士として働いています。
介護付有料老人ホームとは、65歳以上の高齢者が入居される居住型施設で、
24時間、介護スタッフ、看護師等が常駐し家事や身の回りのことをお手伝いするサービスが受けられます。食事、排泄、入浴等の介護も提供しています。
介護付有料老人ホームで働く機能訓練士の仕事は、入居者様の身体機能の維持を図ること。
理学療法の観点からその入居者様に必要な運動プログラムを作り、
それを入居者様に取り組んで頂き、身体機能の維持に努めています。これが維持期リハビリテーションです。
もっと早くに運動を始めていれば・・・
詳細な数字は省略しますが、現在私の部署では毎週50人以上の入居者様のリハビリをしています。
- 膝痛を抱え、痛みを感じながらも3階までの階段を毎日上り下りする方…
- 脳梗塞から半身の麻痺を患い、身の回りのほとんどのことに介護が必要になった方
- 80歳を超えて運動の大切さに気付いたけど、足が弱ってウォーキングやジムには行けない為に、私達のリハビリに依存している方…
人間60年、80年生きていれば他人と違った色々な身体の悩みがあります。私達はその悩みを聴き、
できる限り身体の悩みを解消できるような運動プログラムを提供します。
ただ現実問題、入居者様が目標とするラインまで身体機能を上げることが叶わないことも多くあります。
機能訓練士の実力不足だろ!と言われると返す言葉もなくなってしまうのですが、
介護が必要なレベルの高齢者の身体機能を上げる、または維持することはとても困難なことです。
平成29年度 体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について(年齢別、体力テストの結果) によると
男女共に体力の水準は6歳から著しく向上し、20歳前後をピークに緩やかに低下し続けていきます。
つまり、
加齢に伴い身体機能は低下していくのは生物学的に自然である。
高齢であればあるほど運動で得られる結果は小さくなる。ということです。
だから私達がリハビリをしていてよく思うのは、
「この方、もっと早く運動を始めていれば…」
そう思うのです。
前述した通り、高齢者の身体能力は個人差がとても大きいです。
その中でも突出して身体機能が高い人がいます。そういう方の多くに共通するのが…
運動習慣を早期に身に付けている方です。
・ゴルフが好きで中高年から80歳の今まで毎月コースに出かけられている方…
・地域の老人会に参加し毎日ゲートボールや体操を楽しまれていた方…
・運動の大切さに若い頃に気付きスポーツジムに毎週通っている方…
どんな運動をしてきたかは千差万別ですが、共通するのは早期に始めて、ずっと続けること。
この記事で1番言いたいことは、タイトルの通り
介護予防で重要なのは、早期の運動習慣を身に着けること
なぜ運動が介護予防に繋がるのか?
運動が身体に良いのは周知の事実かと思います。
では、なぜ運動が介護予防に繋がるのでしょうか?解説します。
生活習慣病の予防に繋がる
生活習慣病とは、偏った食事やストレス、不規則な生活、運動不足により引き起こされる症状、疾患のことで、代表的なものに高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞や脳梗塞などの冠動脈疾患があります。
生活習慣病に対する運動による予防効果は非常に高く、
身体活動量が多くなることで内臓脂肪の燃焼、筋肉量が大きくなることで全身の代謝が向上します。
すると内臓の働きが改善し、糖質や脂質の代謝能力が上がります。
血管の伸縮性が良くなり血流の滞りが改善します。
結果、各種の代謝能力の向上、臓器の機能改善により生活習慣病の罹患率が低下します。
生活習慣病の予防は、健康寿命の長期化に繋がります。
病院で生活習慣病を指摘された時、必ず運動習慣を取り入れるよう指導される理由ですね。
怪我を予防できる
ここは理学療法士として強く推したいポイントですね。
(内閣府HP)65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因 によると、
要介護者等について、介護が必要になった主な原因についてみると、「認知症」が18.7%と最も多く、次いで、「脳血管疾患(脳卒中)」15.1%、「高齢による衰弱」13.8%、「骨折・転倒」12.5%となっている。また、男女別にみると、男性は「脳血管疾患(脳卒中)」が23.0%、女性は「認知症」が20.5%と特に多くなっている

(3)内閣府HPより引用
介護が必要になった原因の第4位に、「骨折・転倒」が挙げられるということですね。
この中にはベッドからの滑落や、階段などの高所からの転落も含むと思われます。
介護現場では、高齢者の転倒・転落は切っても切れない事故です。それにより骨折してしまうことも
珍しくありません。
原因は、
- バランス機能の低下
- 俊敏性の低下
- 筋力の低下による歩行安定性の低下
- 認知機能の低下による注意、判断のミス etc..
いずれも加齢に伴う心身の機能低下です。
ウォーキング、筋力トレーニング、あるいはその他のスポーツは
上記3つの機能の維持・向上が期待できます。
私の務める老人ホームでも、骨折や転倒の既往歴が少ない入居者様の多くが運動習慣のある方です。
認知機能の向上が期待できる。
上述した(内閣府HP)65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因 によると、
要介護状態になった原因の1位は「認知症」です。
立場上、多くの認知症の方と関わってきました。
- 洗濯機の使い方、洗濯物の干し方がわからなくなり、洗濯の手伝いが必要になった方
- 認知症から食事の意欲がわかなくなり経管栄養(チューブで栄養を胃に送る)で栄養摂取をする方
- トイレの場所がわからなくなりオムツでの排泄を余儀なくされている方
- 家電のリモコンの操作がわからなくなり、家族や介護職員に家電の操作をしてもらっている方
身体機能面は問題ないけど、認知機能の問題で介護が必要になった方も少なくありません。
運動が、認知症の予防にも、認知機能の維持向上にも貢献する可能性を示す論文は数多くあります。
認知機能低下を緩やかにすることで自分の身の回りのことが自分で行える期間が長くなります。
まとめると、運動習慣を作ることで
- 各種代謝機能の向上により、生活習慣病の罹患を予防できる
- 運動機能が高まることで転倒や転落、それに伴う骨折を未然に防げる
- 認知機能が向上し身の回りのことが自分で行える期間が長くなる
以上のことから、介護予防の為に運動の習慣を早期に作ることを、私は強く勧めます。
運動で、自分らしい毎日を。
運動をしないことで後悔することはありますが、
運動をしたことで後悔することはありません。
参考文献、資料
https://www.mext.go.jp/prev_sports/comp/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2018/10/09/1409885_1.pdf
(3)65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因/内閣府HP

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