高齢者でも筋肉をつけることはできますか?結論→できます!

高齢者の筋トレ

こんにちは ケービーです。老人ホームで理学療法士として働いています。

お客様(入居者様)のリハビリをしている時、こういう質問をよくされます。

「この歳になっても筋肉はつくの?」

 

 

 

 

 

間髪入れずに返します。はい!つきます!

 

 

今日は高齢者の筋力、筋持久力は向上、増強するのか?という疑問を解決していきたいと思います。

筋力・筋持久力・筋断面積

まずは、「筋肉がつく」という言葉は曖昧な為、筋肉に関する能力・機能を分解して説明します。

筋肉を語る時に必要になるのが、筋力、筋持久力、筋断面積(筋肥大)の3つの考え方です。

筋力…筋肉が収縮することで発揮できる力。どれだけ重い物を持てるかと言い換えても良いです。

100kgのバーベルをベンチプレスで1回、挙げたら「筋力がある」と表現できますよね。

筋持久力…筋肉が繰り返し収縮し動作を反復できる力。筋肉の持久力。

20kgのバーベルをベンチプレスで80回挙げたら「筋持久力が高い」と表現できます。

筋断面積(筋肥大)筋肉の断面積。筋肉がどれだけ太いか。

筋断面積が大きいからといって、一概に筋力、筋持久力が高いとは言えません。42.2kmもの距離を走るマラソンランナーの筋持久力は人類のトップにありますが、特別足が太いわけではありませんよね。

上記の入居者様の言う「筋肉がつく」はこれらの3つの概念の全体を指していると考えて良さそうです。ただ、高齢者の欲しい「筋肉」はイコール、「筋肉の能力」だと思います。

その為本記事では「筋力」「筋持久力」の向上が報告された研究を紹介したいと思います。

高齢者の筋力が向上した事例

事例1 マシントレーニング(バランストレーニングとの複合プログラム)による筋力向上

新井、大渕1)らによると、東京都内の高齢者276名(平均年齢75.3±6.5歳)を対象に3ヶ月間のトレーニングプログラムを実施しました。高負荷の筋力増強トレーニング 、バランストレーニング を組み合わせた包括的なプログラムで、実施前後に握力やバランス能力、歩行速度、膝を伸ばす筋肉の筋力を評価しました。

 

結果、プログラムの脱落者を除き、対象のバランス能力、歩行速度、筋力の向上を認めました。

 

このとき行っていた筋力プログラムはマシントレーニングで、1RMの60%以上の高負荷で低回数(10回)を2〜3セットというプログラムです。運動頻度は、1回90分、週2回でした。

RMとは?
Repetition(レペティション)maximum(マキシマム)の略で、
ある重量が最大何回反復できるかを表す言葉です。
つまり、
ベンチプレス100kgを1回挙上するのが限界の場合は 100kgが1RM
アームカール10kgを5回挙上するのが限界の場合は 10kgが5RM
と表現します。
1RMの60%を10回とは、1回挙上できる重量の60%で10回挙上することを指します。
例えばレッグプレスが50kgを1回挙げるのが限界なら、30kgで10回挙上します。

事例2 スクワットや重錘負荷運動、起立訓練と共にレッグプレスマシンを行ったことによる筋力向上

橋立、島田2)によると、地域の高齢者(平均年齢 77.4 ± 5.2 歳)を対象に、スクワット、重錘負荷運動、起立訓練と共にレッグプレスマシンによる高負荷トレーニング(1RMの60%の負荷量で10回3セット)を3ヶ月間行いました。運動頻度は1回 90分、週1回です。

 

結果、レッグプレスマシンの1回最大挙上量の平均値が10kg近く向上しました。

 

と、高齢者の筋力が向上したと報告した研究は多くあり、

上記2例を引き合いに出すと、共通点が2つあります。

  • 1RMの60%の高重量で10回、3セット(高重量、低回数)
  • 1回90分で週1回以上のトレーニング

筋トレを日常的にする方はわかるかもしれませんが、1RMの60%は楽に行える負荷ではなく、休憩があるとはいえ90分のトレーニングはかなり長いと言えます。

若年者に比べ、タンパク質の合成能力が低下している高齢者の筋力を上げるのは簡単でないことがわかります。とは言え、高齢者でもトレーニングによって筋力が向上できることは確実のようですね。

高齢者の筋持久力が向上した事例

事例1  マシントレーニングにより筋持久力が向上した

GalvãoDA 、Taaffe DR 3)によると、(65〜78歳)の28人の高齢者を対象に、レッグプレスやチェストプレスなどの7種目のマシントレーニングを1セットを行う群と3セット行う群にわけ、両群8RMの強度で行いました。運動頻度は、週2回で20週間行いました。

 

結果、筋力は両群で向上し、筋持久力は1セット群よりも3セット群の方が優位に向上していました。

筋持久力に関しては、通常のトレーニングプログラムでは1RMの65%以下の重量で18回〜30回の低重量、高回数のトレーニングが1番効果的です。
上記の事例では8RMと高重量を扱っています。1セット群より3セット群の方がトータルの回数が多い為、筋持久力が向上したと推測しますが、筋持久力のみにフォーカスするなら低重量での高回数トレーニングの方が効果が出ます。
論文が見つけられず、高重量低回数の事例を持ってきました。とは言え、高齢者でもトレーニングにより筋持久力が向上することが認められています。

筋力、筋持久力はレジスタンストレーニングにより向上する

今回は、筋力トレーニングにより高齢者の筋力、筋持久力が向上した事例を紹介しました。

筋力トレーニングは正式名称をレジスタンストレーニングと呼び、特に若年者から中高年に注目されています。しかし、特にレジスタンストレーニングが必要なのは高齢者だと私は思います。

高齢者はサルコペニアという加齢による筋力、筋量の低下が起こることでQOLを大きく損ないます。つまり健康寿命を長く保つ為には筋力、筋量を保つことが必要で、それを実現するのがレジスタンストレーニングの習慣化です。

「いつになっても筋肉は発達します

その事実をお客様に伝えながら、前向きな気持ちでトレーニングに参加して頂いています。

参考文献

1)地域在住高齢者の身体機能と高齢者筋力向上トレーニングによる身体機能改善効果との関係,新井武志,大渕  修 一,小島基永,松本侑子,稲葉康子,日老医誌 2006;43:781-788

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/43/6/43_6_781/_pdf/-char/ja

2)高齢者における筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響,橋立博幸,島田裕之,潮見泰藏 ,笹本憲男,理学療法学 2012;39.3号 159-166

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/39/3/39_KJ00008113225/_pdf/-char/ja

Resistance exercise dosage in older adults: single- versus multiset effects on physical performance and body composition.GalvãoDA 1、Taaffe DR,J Am Geriatr Soc. 2005 Dec;53(12):2090-7.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/39/3/39_KJ00008113225/_pdf/-char/jaGalvãoDA 1、Taaffe DR。

 

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