こんにちは KBです。老人ホームで理学療法士のお仕事をしています。
僕の過去記事で、高齢者の円背について書きました。円背って何?って方はこちらの記事をどうぞ。
3記事に渡って執筆しております、円背について。今回は円背の予防エクササイズを紹介します。
円背は治せますか?
時折お客様に聴かれます。

円背は治りますか?
難しい質問です。
答えとしては、骨粗鬆症や圧迫骨折で変形してしまった骨は運動では治すことはできません。
ただ運動で筋肉をストレッチしたり強化することで姿勢の改善はできますし、現状の維持を図ることはできます。(1山本、坂光によると、65歳以上の円背高齢者に筋力訓練と脊柱可動訓練を週2回、6ヶ月行ったところ、脊柱は伸展し、前傾姿勢の改善が認められました。
さらに言えば、円背の予防には運動がかなり効果的です。猫背の改善にも、同エクササイズをお勧めします。
エクササイズの考え方
まずは姿勢修正エクササイズで大事な考え方を理解しましょう。
筋肉は関節をまたぎ骨に付着しています。これが短縮したり、伸びきってしまうことで、関節の位置(アライメント)がずれて不良姿勢になります。
その為、姿勢修正エクササイズで行うことは主に2つに分かれます。
- 不良姿勢により硬くなったり、短縮している筋肉のストレッチング
- 不良姿勢により延長している筋肉、筋力が低下している筋肉の筋力強化
どの筋が短縮しているか、どの筋が延長・弱化しているかでアプローチを考えます。
各筋の短縮筋、延長・弱化筋をまとめてみました。これは円背像の一例なので実際の対象では筋肉の状態が違う場合もあります。
では、姿勢修正エクササイズを行っていきましょう!
姿勢修正エクササイズ
頸部伸筋群のストレッチ
対象筋:短縮した後頭下筋群(首の後ろの筋肉)のストレッチ
〜方法〜
①座った姿勢で両手を頭の後ろに組む。後頭部下のくぼみあたりがベスト
②顎を引き、両手を前に押す。首の後ろの筋肉がゆっくり伸びていく。この時体幹が曲がらないように注意。
③伸びきったところで20〜30秒間保持する。息を止めないようにしてくださいね。
④15秒休憩する。これを1セットとして3セット行いましょう。
胸椎伸展引き出しストレッチ
対象筋:短縮した大胸筋、小胸筋のストレッチ 延長した脊柱起立筋の強化
〜方法〜
①仰向けになる。予め、バスタオルを筒状に丸めたものを肩甲骨よりも少し下辺りに置いておく。
②膝を曲げ、顎を引いて、バンザイをする。この時、腰を反らないように腹筋に力を入れる。
③この姿勢で30秒〜60秒間保持しストレッチする。息は止めないでくださいね。
④15秒休憩する。 これを1セットとし3回行いましょう!
⑤ ②の状態から、ストレッチではなく胸椎伸展(胸を張る)運動をすると脊柱起立筋の強化もできます。
ハンドリリースプッシュアップ(上体そらしバージョン)
対象筋:延長弱化した脊柱起立筋、大殿筋、僧帽筋中・下部の強化
〜方法〜
①ヨガマット(床)にうつ伏せになる。膝は伸ばした状態でつま先を床に立て、手は頭より少し上に置く。
②胸をそらしながら腕、足を床から浮かせる。この時、肩甲骨を寄せお尻に力をいれる。
③2秒保持し、床に手と足を下ろす。
④手を床について押し、胸をゆっくり反らせる(コブラのポーズ)。この時、胸より下は床につけておく。
⑤以上を5回1セットで、休憩を1分挟みながら、3セット行う。腰や背中に痛みがないようであれば10回1セットに増やしていく。
こちらのエクササイズは少々高負荷です。上体そらしが行えない方(特に高齢者)は、無理はしないようにしましょう。
※みぞおちから上(胸椎)を持ち上げるイメージです!腰を反らないようにしましょう↓
広背筋のタオルストレッチ
対象筋:短縮した広背筋のストレッチ
〜方法〜
①タオルを持って壁に背中をつけて座り、背中を丸める
②タオルの真ん中を両手で持ち、両肘同士をくっつける。
③両手の小指同士を離し、この時小指の間にあるタオルをピンと張っておく。
④タオルが緩まないように両腕を上げていく。小指が近づきタオルが緩みそうになったところで止める。
⑤30秒〜60秒保持して、ストレッチする。呼吸は止めないでくださいね。
⑥終わったらゆっくり腕を下ろしていく。15秒休憩。これを3セット行ってください。

けっこう疲れるんですよね。これ。広背筋が硬いのでしょう…
広背筋をストレッチするのはなぜ? 円背(猫背)の方には、広背筋のストレッチを施行します。胸椎が後弯しているなら、 背中についている広背筋は延長してそうだけど?と思う方もいるかもしれません。 実は広背筋は背中から上腕骨の前方についており、収縮することで肩関節を内旋します。 すると上腕骨が前方へずれる方向に働き、巻き肩が強くなってしまいます。 仮に広背筋が短縮していなくても、広背筋のストレッチは重要です。
腹式呼吸(ロングブレス)
対象筋:弱化した腹部の強化、柔軟性の向上、背中の筋肉の緊張緩和、
〜方法〜
①仰向けになる。背中の浮いている部分があったら、バスタオルなどを敷きなるべく隙間を埋める。
②膝を曲げて立てておく。顎を軽く引き、腹部の上に両手をおき、腹部のふくらみとへこみを確認できるようにする。
③鼻から息を吸い、口から長く吐く。このとき口をすぼめ、細く吐く。この時の注意点は以下の通り。
- 顎は引いておく
- 息を吸った時に腹部がふくらみ、吐く時にへこんでいるか手で確認する
- 息を吐く時間が息を吸った時間の4倍以上になるように呼吸する。
- 口のすぼめかたは、ロウソクの火を消す時の口
- 息を吐きお腹をへこませて、腰から背中を床に押し付ける
④息を吐ききる時に、軽く頭を浮かして残った空気を全て吐き出す。さらに腹筋を収縮できる。
15秒休憩。 これを5回1セット、1日に3セット行う。
ハムストリングスのストレッチ
対象筋:短縮したハムストリングスのストレッチ
〜方法〜
①伸ばしたい方の足をソファやベッドに乗せる。この時、膝の下にクッションを置く
②反対側の足を後ろに引いていく。この時背筋はまっすぐに保ちながら体幹を倒していく
③伸ばしたい方の膝の裏が伸びきったところで30秒〜60秒保持してストレッチする
注意点
- 膝の下にクッションを置き軽く膝を曲げること。膝を過伸展しないことでハムストリングス以外の組織を保護できる
- 体幹と、伸ばさないようの太腿が一直線上にあるようにする。骨盤を前傾させることができ、より筋肉が伸ばせる。
④ストレッチしたら、ゆっくり膝を戻す。15秒休憩し、これを3セット行う。
まとめ
今回は円背の予防、猫背改善エクササイズを6つ紹介しました!
まだまだ紹介したい運動がたくさんありますが、今回はその中からピックアップしました。
短縮している筋肉をストレッチしてから、延長、弱化している筋肉を強化していきます。
若い頃からの姿勢の崩れは必ず高齢になった時に症状として現れます。今のうちに予防しておきましょうね。
そして既に円背になってお困りの方へ。これらの運動により、円背姿勢が改善した報告は多く挙げられています。これ以上悪化しないように、エクササイズを行っていきましょう!
※心配な方は医師へ運動の可否を相談してから実施してくださいね。また、痛みが出た場合は運動を中止してください。
参考文献
運動療法により高齢者の円背姿勢は改善するか.第41回日本理学療法学術大会 抄録集2006
正しく理想的な姿勢を取り戻す 姿勢の教科書(竹内仁 ナツメ社)
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