
理学療法士のケービーです。今、利用者様の有酸素トレーニングを指導しています。

ハア、ハア、エアロバイクがこんなに辛いとは…

10分経ちましたね!頑張ってください!

なんでこんなしんどい運動をしなきゃいけないの?体操でいいじゃない…
おや…どうやらこの利用者さんは有酸素運動の必要性を理解していないようですね。
トレーニングする理由を知らせずに運動を提供するのはセラピストとして、よくないですよね。
ウォーキングやエアロビクスに代表される有酸素運動が身体に良いのは有名なことだと思います。
では、具体的に有酸素運動がどう身体に良いのでしょうか?
今日は高齢者における有酸素運動の必要性を、一緒に学んでいきましょう!
有酸素運動とは?
運動には有酸素運動と無酸素運動の2種類があります。簡単に説明しますね。
私達は食べ物の中からグリコーゲンを取り込み、筋肉や肝臓に貯蔵します。運動をするときはその貯蔵したグリコーゲンを分解します。すると、分解する過程でATPというエネルギーが発生します。
短時間ではこのグリコーゲンを分解してエネルギーを取り出していくのですが、
貯蔵しているグリコーゲンは限られている為、長期間の運動の際は体脂肪を分解してエネルギーを作る
仕組みに切り替えます。
体脂肪を分解するには酸素が必要である為、大量の酸素を取り込みながらエネルギーを産生します。
これが、有酸素運動です。
大量に酸素が必要な為、ウォーキングやエアロビクスで息が荒くなるわけですね。

お金で表すなら…グリコーゲンは貯金で、体脂肪は不動産って感じかしら?
昔、旦那の借金で首が回らなくなって、持ち家を売りに出して返済したのよ。

例えが重い。
利用者さんの例えが適切かどうかわかりませんが、持ち物を消費して解決する。という点ではあながち、間違い無いのかもしれません。
有酸素運動は、体脂肪があれば酸素を供給し続ける限りエネルギーを産生できます。だから40分のウォーキングも訓練次第で可能になるのですね。
実際には、体脂肪が遊離脂肪酸に分解されて…と細かいメカニズムがあるのですが、ここでは割愛しましょう。
有酸素運動は継続的に長時間、行える低負荷の運動です。種目ではウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロバイクなどが挙げられます。
無酸素運動は、グリコーゲンとブドウ糖を消費してエネルギーを産んでいる状態。高強度の運動をする時は、この無酸素運動が働きます(上記の有酸素系の代謝も継続している)
種目としては強度が高い物で、筋トレ、短距離走などが挙げられます。

ランニングは純粋な有酸素運動とは言えません。強度が高すぎるからです
では有酸素運動がどんなものかわかったところで、有酸素運動のメリットを、高齢者目線で解説します!
脂肪燃焼効果
有酸素運動は体脂肪を分解してエネルギーを産生すると書きました。言葉通り、有酸素運動をすると脂肪が減り、結果、痩せます。
脂肪燃焼効果とは、有酸素運動で体脂肪がエネルギーで使われることを指すのですね。
さらに、体脂肪が減るといくつか健康に好影響があります。
血糖値の改善
膵臓のランゲルハンス島から分泌されるインスリンは、血糖値を下げる働きがあります。
体脂肪が多いと、このインスリンの分泌能が低下(インスリン抵抗性)する為に血糖値が上がりやすく糖尿病のリスクが高まります。
よって体脂肪を減らすことで、血糖値の改善が見込めます。
脂質異常症を予防する
蓄積された内臓脂肪は、再び分解され、血中の中性脂肪やコレステロールを増やします。
血中のコレステロールや中性脂肪が基準値より高い状態を脂質異常症と呼びます。
脂質異常症は、脳梗塞や心筋梗塞などの冠状動脈疾患のリスクを高めます。
有酸素運動で、血中コレステロールと中性脂肪を改善して脂質異常症のリスクを下げましょう。
血圧を良好にする
血圧の上昇は、動脈硬化が原因と言われています。血中の過剰なコレステロールは、動脈の血管壁に入り込み、コブのような動脈硬化を形成します。結果、血圧が上昇するのですね。
動脈硬化は上述した冠状動脈疾患のリスクを高める為、命にも関わります。
Point!
体脂肪の蓄積は見た目の問題だけではなく、生活習慣病のリスクを高める
関節痛の改善
これは脂肪燃焼効果に付随するものですが、生活習慣病ではないので別の見出しとしました。
変形性膝関節症という疾患をご存知でしょうか?
変形性膝関節症は、膝関節にある軟骨や半月板がすり減り炎症が起きる疾患です。
厚生労働省によると、自覚症状のある変形性膝関節症の患者は、1000万人以上と言われており、多くを高齢者が占めます。この疾患は高齢者のQOL(生活の質)に大きな影響を与えます。

膝が痛い… 歩く時も杖が欲しくなったし、立ち上がる時が怖いわ!
変形性膝関節症の主な症状が、痛みです。
歩く時も、立ち上がる時も、ひどい時は何もしなくても痛い…これが変形性膝関節症の関節痛です。
では、このツライ症状を和らげるには、どうすれば良いのでしょうか。
ここでも、有酸素運動が役立ちます。
有酸素運動による体重減少(脂肪燃焼)が膝への負担を和らげます。
人間が歩く時、カカトを接地した瞬間に体重の5倍以上の衝撃が身体に加わると言われています。
体重50kgの人なら250kg!体重が60kgの人なら300kg!…歩く時に膝が痛むの納得できますね。
ここで、体重60kgの人が50kgまで減量した場合、50kgの衝撃緩和ができることがわかります。
その為、変形性膝関節症の患者さんのリハビリで、負担の少ないエルゴメーター(エアロバイク)を提供することも多いです。これは大腿四頭筋を強化する意味合いもあります。

脂肪燃焼効果による減量で、関節痛を改善することができるんですね
心肺機能の向上
心肺機能。テレビなどでたまに聴く言葉ですね。
「あのマラソン選手は心肺機能が高く〜」とか、
「心肺機能を高める為には〜」とか。
なんとなく、これが上がると身体が楽になりそうですよね。もう少し、詳しく知っておきましょう。
私たちの身体の中には、全身に栄養と酸素を供給するための血液が絶え間なく流れています。
この血液を送り出しているポンプが、心臓です。
心臓は心筋と呼ばれる筋肉でできており、収縮することで全身と肺に血流を送ります。
肺に送られてきた血液は、二酸化炭素と酸素を交換して再び、心臓に戻ります。再び全身へ…
これが肺循環、体循環です。
この循環がどれだけ効率良く働くかを、心肺機能と呼びます。
有酸素運動は、この心肺機能を向上させる効果があります。具体的には、
- 心筋が発達することで、多くの血液を心臓から送り出せる
- 全身の血管が太くなる。毛細血管が増えて血流量が多くなる
- 呼吸筋が発達し、多くの酸素を取り込むことができる(換気機能の効率化)
- 肺活量が多くなる
これらの機能が上がることで、運動の時に効率良く心肺が働き、身体が楽になります。
体力がつく!とも言い換えてもいいかもしれませんね。
筋持久力の向上
筋肉は性質と見た目から大きく分けて2種類に分かれます(厳密には3種類ですが割愛)
それは遅筋と、速筋。赤い筋肉、白い筋肉と表現することもあります。
遅筋:赤い筋肉。長時間に渡る力の発揮が可能であり、とても疲れにくい筋肉。反面、大きな力を瞬時に出すのは苦手。マラソンランナーやトライアスロン選手はこの筋肉がとても発達している。
速筋:白い筋肉。短い時間に大きな力を出すのに長けている。重い物を持ち上げる時に、この筋肉が発達していると効率良く持ち上げられる。反面、長時間は収縮できず、疲れやすい。ボディビルダーや砲丸投げの選手でよく発達している。

長時間泳ぐマグロは遅筋が発達していて、
瞬発性のあるヒラメは速筋が発達してますよ

だからマグロは赤身で、ヒラメは白身なのね!
人体の70%ほどは遅筋で構成されていると言われ、遅筋は姿勢の保持や運動時に持久性を発揮します。
つまり、綺麗な姿勢を長く保ちたい時や、長く安全に歩く。という観点では、遅筋を鍛えるのが有効です。
遅筋を鍛えるなら、ズバリ!有酸素運動。
筋肉は鍛える方法によって、遅筋が発達するか、速筋が発達するかが変わってきます。
例えば、重いバーベルを持ち上げるウェイトトレーニング。この運動では素早く力強く筋肉が収縮するため、速筋が発達します。
逆に、長い距離を走るマラソンや、サイクリングでは長時間の収縮を必要とする為に遅筋が発達します。
つまり、有酸素運動は遅筋を発達させ、筋持久力を上げることができるのです。
筋持久力を上げるメリット 私達は、日常生活を送るにあたり、必ず筋肉を使っています。ベッドから起き上がる時も、 食器を洗う時も、近くのスーパーに歩いて行く時も。 従って、家事を長時間していたり、長い距離を歩いているとだんだん疲れてきます。 疲労には色々な原因がありますが、大きな原因の一つが筋肉の疲労です。 筋肉は繰り返しの収縮でエネルギーを失い、筋疲労を起こします。 持久性の高い遅筋を鍛えておくと、疲労しにくくなります。長時間収縮が可能な遅筋が 力を発揮することで、疲れにくい身体を作ることが可能になるのです。
まとめ
高齢者が有酸素運動を行う主たる理由は以下の通り
- 脂肪燃焼による生活習慣病の予防
- 膝や股関節の関節痛の予防、改善
- 心肺機能の向上
- 筋持久力の向上

全身にいいことがあるのね!頑張ろう!
有酸素運動が、介護予防の為には必須であることがわかって頂けたでしょうか?
介護予防活動で、快適で健康的な生活を!
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