こんにちは!ケービーです。老人ホームで理学療法士の仕事をしています。
趣味は筋トレです。週4回の筋トレはもはや習慣と化しています。2LDKの一室を、ホームトレーニングジムにして、日々、理想の身体を目指しトレーニングをしています。

僕のホームジム。やれない筋トレの方が少ないです
いきなり自分語りして何なの?と思われるかもしれませんが、「日常的に筋トレしてる人なんだな」くらいに思ってください。
さて、最近、私が働いている老人ホームでスポーツジムに通う方が増えてきています。
その中には、

私、プロテインも飲んでるのよ!
とプロテインシェーカーを見せてくださる方もいらしゃいます。スポーツジムが薦めてくれるのだとか。
トレーニングへの前向きな姿勢に、感服させられます。
ワークアウトジャンキー(筋トレ依存症)の僕はともかく、筋トレをする高齢者も、しない高齢者の間でも、プロテインは市民権を得つつあるようです。
本日は、高齢者がプロテインを飲むことで得られるメリット、注意点をお話しします。
プロテインとは?
プロテインとは、タンパク質を主成分とした飲料型のサプリメントです。
一定の分量の粉を水や牛乳などで溶かすことでプロテインシェイクを作ります。
勘違いされがちですが、プロテインは薬ではありません。あくまで、タンパク質の摂取量を補う、サプリメント(栄養補助食品)です。飲めばいきなりムキムキになるものではありません。
用途は?
前述したように、プロテインはタンパク質の量を補う目的があります。人により用途が異なり、
- 筋トレを日常的に行っており、筋肉をつけるために筋トレ前後に飲む
- タンパク質は髪や爪、皮膚の元になる。美容の為にプロテインを飲む
- 1日の食事量の中でタンパク質が不足しており、それを補う為に飲む
- ダイエット中に、間食の代わりに飲む
と、一口にプロテインを飲むと言っても様々な理由があります。
高齢者の場合は、「筋肉をつける為」「タンパク質を補う為」が多いと思います。
なぜならテレビなどのメディアや、健康教室で筋トレの有効性が謳われており、その為にプロテインを飲むことを推奨しているからです。
高齢者にプロテインは必要か?
実際のところ、高齢者にプロテインは必要なのでしょうか?私の答えは、
「絶対必要じゃないけど、食事で十分なタンパク質が摂れないなら飲めばいい」
です。
繰り返しますが、プロテインは栄養補助食品です。あくまでもタンパク質であり、高齢者が飲んだからと言ってそれだけでは害はなく、むしろ足りないタンパク質を補うことができ、より元気になれると思います。
ただし、摂りすぎには注意が必要です。足りない分をプロテインで補うという目的を忘れずに、プロテインを飲むことをお勧めします。
高齢者が飲むべきプロテインの量は?
高齢者が飲むべきプロテインの量を考えていきましょう。
厚生労働省(1)によると、65歳以上の高齢者のタンパク質摂取推奨量は、
男性:60g/日
女性:50g/日
とされています。上限は、1日の摂取カロリーの20%とされています。
この摂取推奨量を食事から摂取することができない場合に、補える分量のプロテインを飲む。
これが正しいプロテインの使用方法です。
例)70歳男性 Aさん 腎臓や肝臓などの疾患の既往歴無し。
Aさんは、1日60gのタンパク質を摂取するように心がけています。最近は栄養計算アプリを使い
自分の食事を管理しています。
本日は朝食におかずとして、目玉焼き2枚を、昼食にサンマの焼き魚を、
夕食に納豆を食べました。
栄養計算アプリで計算すると、タンパク質を47.6g摂取できていました。
Aさんは足りないタンパク質をプロテインで補うことにしました。
この場合、Aさんが摂取するプロテインは、タンパク質量にして12.4gです。
このように、プロテインを食事の補助として使うんですね。
健康な高齢者で日常的に運動している場合は、前述した上限の、1日の摂取カロリーの20%まで摂取して良いでしょう。
では、何らかの疾患を持つ高齢者でも同様のことが言えるのでしょうか。続けて解説します。
【注意】高タンパク食で腎臓機能が低下した報告
ここまでは、健康な高齢者の話をしてきました。では、腎臓機能に異常のある高齢者ではプロテインはどのような影響があるのでしょうか。これについては、報告が2つあります。
どちらもアメリカの研究ですが、
高タンパク質が腎機能障害の悪化やリスクを高める可能性を示唆しています。
軽度の腎機能障害をもつ女性では、1.3 g/kg 体重/日以上の中~高タンパク食の生活を11年間続けたところ、腎機能が悪化してしまったとのこと。(2)
さらに、健康な高齢者でも、2.0 g/kg 体重/日の高タンパク食により、腎障害のリスクが上昇すると報告されています。(3)
高齢者のタンパク質の上限は総摂取カロリーの20%とされていますが、体重(kg)×2(g/日)以上の高タンパク食は避けた方が良さそうです。
※慢性腎不全など、腎機能障害の既往がある方は、必ず医療機関で指導されている栄養管理を守ってください。また、スポーツジムなどでプロテインを薦められることがありますが、必ずご自分の腎機能、肝機能の検査数値に異常がないことを確認した上で飲んでください。検査値がわからない方は、医療機関にて血液検査を受けてください。
適切な量のプロテインを飲んで、健康な毎日を!
少し脅かしてしまいましたが、あくまでプロテインはタンパク質なので、過剰摂取にならないように適切な量を摂れば、より元気に過ごせると思います。僕も、入居者様の身体、既往歴を把握した上で、プロテインをお勧めしています。
タンパク質摂取によるメリットはこちらの記事で紹介しています。
どんな栄養素も、適切な量を摂ることが大切です。身体に良いから!ととりあえずで飲んでみるのではなく、なぜプロテインを飲むのか?どれだけ飲めば良いか?を考えてから、生活に取り入れてみましょう。
参考文献
(1)出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 の策定ポイントについて
(2)Knight EL, Stampfer MJ, Hankinson SE, et al. The impact of protein intake on renal function decline in women with normal renal function or mild renal insufficiency. Ann Intern Med 2003 ; 138: 460─7
(3)Walrand S, Short KR, Bigelow ML, et al. Functional impact of high protein intake on healthy elderly people. Am J Physiol Endocrinol Metab 2008 ; 295: E921─8.
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