ロコモティブシンドローム、フレイル、サルコペニア、…混同しやすい高齢者の変化を区別して解説!

高齢者の身体

こんにちは。ケービーです。老人ホームで理学療法士のお仕事をしています。

介護分野に身を置いていると、高齢者の加齢に伴う変化に関する知識が自然とついてきます。
その中で、よく聴く言葉でありながらもなかなか区別がしづらい言葉があります。
それが、
フレイル

サルコペニア

ロコモティブシンドローム

です。この3つの概念を機能低下三銃士と呼んでいます。

それぞれ聞いたことはあってもそれぞれを区別して説明できる方は実はそう多くありません。
しかし、この3つの概念は高齢者の介護予防を語る時の重要なキーワードですので、区別する必要があります。

今回は、機能低下三銃士であるフレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの違いを勉強していきましょう。

ロコモティブシンドローム(運動器症候群)

定義:運動器の障害のために移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高くなる状態

提唱:日本整形外科学会

判定方法:ロコモ度テスト

対策:ロコモーショントレーニング(下肢、腹筋のトレーニングと、バランス訓練)

ロコモティブシンドロームは、運動器(骨、筋肉、関節など)が衰えることで、「立つ」ことや、「歩く」機能(移動機能)が低下している状態のことを指します。2007年に提唱された比較的新しい概念です。
予備軍を含め、国内に4700万人のロコモ状態の人がいると言われています。

人は、一定の年齢を超えると、加齢により徐々に運動器が衰えていきます。下肢の筋肉の萎縮により立ち上がりに苦労したり、膝や股関節の関節症により歩くのに痛みが生じます。また、長く続く運動不足によって、立つ、歩くという動作自体のパフォーマンスが落ちていきます。

理由は様々で、運動器の機能低下により全体的な動作、移動能力が低下している状態をロコモティブシンドローム(以下ロコモ)と言います。

ここで注意することは、ロコモは高齢者限定の概念ではなく、全年齢で適応されるものです。
いくら若くとも、運動不足や運動器疾患により移動機能が低下している場合は、ロコモと判定できるのです。

とは言っても、主の対象は中高年〜高齢者ですので、ロコモ予防の呼びかけの目的は、介護予防です。
運動不足の対策と、運動器疾患の早期発見、早期治療の呼びかけに、ロコモという言葉が大きく貢献しているんですね。

ロコモティブシンドロームの判定は、専門知識がなくともチェックできるように工夫されている、「ロコモ度テスト」というものがあります。

日本整形外科学会公式HPがとても見やすいので、是非ご覧ください。

フレイル

概念:「加齢に伴う様々な機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態」

提唱:日本老年医学会

判定方法:様々あり。Friedらのフレイルの評価基準、フレイルの基本チェックリスト、イレブンチェックなど

対策:食事管理、筋力トレーニングを始めとした運動、持病の管理

フレイルは、ロコモよりも、少しだけ複雑な概念です。これは、「加齢によって身体のあらゆる機能が低下することで、病気や怪我、外界の変化などの健康に悪影響を及ぼすことに対してひどく脆くなった状態」と言い換えると少し、わかりやすくなります。

フレイルは、英語のFrailty(フレイルティ)という言葉が語源になっており、日本語でいうと「虚弱」「老衰」という意味です。
「老衰」と言うと、老いて身体機能が落ち、もう二度と以前のような健康状態には戻れないようなニュアンスを感じますが、フレイルは適切な介入をすることで、身体機能の維持、向上によってもとの健康状態を取り戻せる可能性があります。

そして、フレイルは単なる「身体の衰えとそれに伴う病気の発症」
ではなく、認知、精神的な機能、社会的な能力の低下も含む、極めて包括的な概念です。

身体機能の低下から、それに伴って起きる精神機能の不安定化、それに伴い減少する社会活動…
それぞれが相互に悪影響しあい、外界からの脅威に極めて脆くなる状態、それがフレイルなのです。
フレイルについての詳細な記事を書きましたので、是非、併せてご一読ください。

フレイルの対策は、多面的なアプローチが必要です。大きくは、以下の通りです。

  • 食事管理
  • 筋力トレーニングを始めとした継続的な運動
  • 持病の管理
  • ポリファーマシー(様々な薬剤を、必要以上に服用している状態)による健康被害を予防する
  • 社会活動に参加する&周囲が本人の社会参加に協力する

いずれにせよ、フレイルの対策に他者の協力は必須と言えます。周囲の人の早期の察知、対策が大きな影響を与えるでしょう。

サルコペニア

概念:加齢や疾患による骨格筋量の減少と筋力の低下、それに伴う身体機能の低下

提唱: Irwin Rosenberg

判定方法:歩行速度のテスト、握力、筋力検査による判定

対策:食事管理、薬物治療、筋力トレーニングを始めとした継続的な運動

サルコペニアは、加齢や病気により骨格筋量と筋力が低下する現象です。それに伴い、歩く時や起立時に転倒しやすくなることがあります。

サルコペニアは一次性(加齢性)サルコペニアと二次性サルコペニアに2つに分類されます。

一次性(加齢性)サルコペニア:加齢以外の原因が確認できないサルコペニア

二次性サルコペニア:活動の低下、疾患、栄養不足などが原因のサルコペニア

サルコペニアが語られる時の多くは加齢性のサルコペニアを指します。

サルコペニアは高齢者の多くに見られる状態で、80歳以上の高齢者におけるサルコペニアの割合は、11%〜50%と言われています。

筋力検査が一般的な介護施設ではできない為、精査はできませんが、僕がリハビリしている利用者様の半分以上がサルコペニアと推測できます。

ロコモティブシンドロームとよく似ていますが、ロコモは運動器(骨、関節、神経、筋肉)全体の障害、機能低下であるのに対し、サルコペニアは筋肉、筋力の低下とそれに伴う身体機能の低下であり、ロコモは全年齢を適応としますが、加齢性サルコペニアは高齢者のみ対象と考えて良いでしょう。
そして、サルコペニアはフレイルの原因にもなります。

サルコペニアの対策は、筋力、筋肉の増強向上を目的とした生活管理を行います。

まとめ

高齢者の介護予防の重要なキーワード、ロコモティブシンドローム、フレイル、サルコペニアを解説しました。

ロコモティブシンドローム
通称、ロコモ。骨、関節、筋肉などの運動器の障害により、歩くことや起立動作などの移動機能が低下している状態。全年齢に適応できる。

フレイル
加齢によってあらゆる身体、精神機能の低下が起き、外界からのストレスに弱くなった状態。それらの影響により閉じこもりなどの社会的な問題を引き起こすことがある

サルコペニア
骨格筋量の減少、筋力の低下により身体機能が低下している状態。
加齢性のものとそうでないものがあるが、多くの場合は高齢者の加齢性サルコペニアを指す。フレイルの原因となる。

各概念の詳細な記事は、他記事にて解説したいと思います。

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