こんにちは。ケービーです。老人ホームで理学療法士として働いています。
高齢者のリハビリに、レジスタンストレーニングは欠かすことができません。大型の老人ホームで働いていると、年間100人以上の利用者(以下クライアント)のトレーニング指導に携わります。
この記事では、高齢者のレジスタンストレーニングを指導する上で必須となる評価項目をまとめてあります。
身体機能面だけではなく、クライアントの精神面、認知面も評価項目として載せています。クライアントの支援に役立てば幸いです。
Step1 トレーニング導入前の事前情報の収集
実際にトレーニングを行う前に、クライアントの基本情報、どんなリスクがあるのかを明確にする必要があります。カルテや、カウンセリングシートなどで、これらの情報を事前に知ることも可能です。
基本情報
- 年齢
- 性別
- 身長
- 体重
- 住まい
- 家族関係
- 性格、気質
- 嗜好品:酒、お茶、タバコ、珈琲など
- 認知機能
- ADL(日常生活動作)
リスク因子
①既往歴:病歴。これまでかかったことがある病気。
整形疾患…変形性膝関節症、変形性股関節症、関節リウマチ、椎間板ヘルニア、脊柱狭窄症、骨折歴など
循環器疾患…動脈硬化、高血圧症、狭心症、心筋梗塞、心不全、不整脈など
呼吸器疾患…喘息、肺炎、肺ガン、その他の呼吸機能低下
内分泌疾患…バセドウ病、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、褐色細胞腫など
代謝疾患…糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、肥満症
その他、精神疾患、泌尿器疾患、皮膚疾患など
②年齢:一般的に高齢であるほど、リスクが上昇します。
Step2 問診、カウンセリング項目
クライアントとの会話(カウンセリング)の中で、クライアントのニーズなどの主観的情報を収集します。
ニーズ、目標
- 興味、関心
- 悩み
- 理想
- ニーズ(動因)
- 目標
ニーズの裏にある真のニーズ、動因 全てのニーズの裏には、真のニーズである動因が隠されていると言われています。 例えば、カウンセリング上の[運動する目的]の欄に、「痩せたい」 とクライアントが記入したとしても、それをそのまま鵜呑みにしてはいけません。 「痩せたい」という裏には、様々な理由が隠れている可能性があるからです。 例えば、「脂質異常症を医者に指摘された為、痩せる必要がある」とか 「最近、体が重くなってきたから」など、「痩せたい」にも動機が様々だからです。 こういった表面的なニーズの裏の、真のニーズのことを動因と言い、 リハビリやボディメイクのプログラムを建てる前に明確にすべき項目です。
主観的情報
Step1.トレーニング導入前で収集した「基本情報」に加えて、実際にクライアントと会話して得られる主観的な情報には、トレーニング中に得られる情報以上に貴重な情報も多くあります。例え雑談が中心になったとしても、そこにはトレーニングのヒントが隠されていることが往々にしてあります。
- 食事や運動などの知識
- 運動習慣:内容、頻度、強度
- プログラムへの意欲
- 生活習慣
- 趣味活動
- 価値観:人生、生活に関して主軸を置いている点
- 外向的/内向的:関心が他者に向きやすいか/自己に向きやすいか
- 交友関係
- 食事の好み
- 加齢に対する認識:加齢の受け入れや、加齢による生理的な変化の知識
Step3 初期評価
問診、カウンセリングが終了したら、プログラム立案の為に、初期評価を行います。評価項目は様々ありますが、優先度が高く普遍的な物をここでは紹介します。クライアントのニーズに合わせて適宜、選択してください。
バイタルサイン測定
クライアントの循環動態を数値として評価できるのが、血圧などのバイタルサインです。基準値や標準値を把握した上で、評価していきましょう。
- 血圧:収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧など
- 脈拍
- Spo2(経皮的動脈血酸素飽和度)
- 体温
- 呼吸:数、深さ、呼吸パターン
- 顔色、表情など
身体、運動機能の評価
- 身長
- 体重
- BMI
- 関節可動域
- 筋力(徒手筋力テスト、ハンドヘルドダイナモメーターなど)
- 基本動作(起居動作、移乗動作、移動動作)
- 日常生活動作
- 姿勢分析
- 握力(全体的な力の指標になる)
- バランス評価(片脚立位テスト、ファンクショナル・リーチテストなど)
- 耐久性(6分間歩行テストなど)
- その他、既往歴に応じて神経学的テストや整形外科的テストを実施。
Step4 トレーニング直前の評価項目
カウンセリング、初期評価を終えてプログラムを組んだら、トレーニングを開始します。この時、クライアントのバイタルサイン、自覚症状などの有無を確認します。このステップに関しては、初回カウンセリング以降、セッションを行う直前に必ず評価します。
バイタルサイン測定
クライアントの循環動態を数値として評価できるのが、血圧などのバイタルサインです。基準値や標準値を把握した上で、評価していきましょう。
- 血圧
- 脈拍
- Spo2(経皮的動脈血酸素飽和度)
- 体温
- 呼吸
- 顔色、表情など
主観的情報
- 痛みの有無
- 気分
- 前回のセッションから今回までの経過、変化など
- その他、自覚症状の有無
もし、クライアントに自主トレーニングや課題を依頼している場合は、このタイミングで確認しましょう。
Step4 トレーニング中
レジスタンストレーニング中は動作や筋肉の観察は当然ですが、この時、高齢者の身体の内部では大きく循環動態が変化しています。主観的情報、客観的情報をバランス良く確認していきましょう。
客観的情報
- バイタルサイン
- 顔色
- 表情
- 呼吸
- 運動時の動作:適切な軌道、リズムか、代償動作は出ていないか
- 姿勢
- 筋肉の収縮、伸長、弛緩など
主観的情報
- 疲労感
- 痛みの有無
- 対象とする筋肉への負担感
Step5 トレーニング後
評価はトレーニング後まで続きます。
客観的情報
- バイタルサイン
- 顔色
- 表情
- 呼吸
主観的情報
- 疲労感
- 痛みの有無
- その他自覚症状
セッション終了時に、アフターカウンセリングを行います。以下が、主な評価項目です。
- セッションの全体的な感想
- 目標への進捗度
- 適切な負荷であるか
- その他不明な点、不安な点
まとめ
今回は、僕がクライアントの指導の際に、実際に評価している項目をまとめてみました。
可能な限り普遍的な内容を心掛けたため、「あの項目は?」と気になる点もあるかと思います。
是非、Twitter @KbShowheyにてご意見頂けるとありがたいです。
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