高齢者の筋持久力を向上させることは可能?メリットと研究例を紹介

高齢者の筋トレ

こんにちは。ケービーです。老人ホームで理学療法士として働いています。

現在、日本では空前の筋トレブームが到来しており、今年(2020年)開催の東京オリンピックが近くにつれ、その勢いはさらに増すことが想像できます。
スポーツジムでは、高齢者の姿を見かけることも多くあり、筋トレマシンを利用している姿も、珍しくはありません。

しかし、残念ながら多くの高齢者はマシンを利用する際に、「筋トレの目的」を明確にして「適切な回数設定」を行えていないのが現実だと思います。

今日は、高齢者の筋持久力を向上させるトレーニングについて勉強していきましょう。

目的に応じてトレーニングの回数は変化する

筋力トレーニングによりもたらされる効果は主に3種類あり、

筋力の向上瞬間的に発揮できる最大の力の向上(単純に、”力が強くなる”と言い換えてもいいでしょう)

筋肥大…筋繊維の太さが太くなる(筋肉が大きくなります)

筋持久力の向上筋肉が連続で収縮できる回数の向上(筋肉の持久性が上がります)

これらの能力は、筋力トレーニングの1セット中の反復回数により、効果が変化します。
筋力を鍛えたいなら、筋力向上の為のプログラムを、筋肥大の為なら筋肥大のプログラムを行う必要があります。

このように、筋肉の成長が目的に沿ったプログラムに左右されることを、「特異性の原則」と言います。

筋持久力向上のプログラムを作るにあたり、筋肉は2種類あり、速筋(白筋)と遅筋(赤筋)に分かれていることを理解する必要があります。

ざっくり説明!
速筋(白筋)・・・瞬間的な力発揮が得意な筋肉。パワーはすごいが、疲れやすい。
遅筋(赤筋)・・・長時間、高回数の収縮が可能。疲れにくいけど、パワーは弱い。

筋持久力を高める為には、力発揮は弱いけど長時間、高回数の収縮が可能な遅筋を鍛える必要があります。

筋持久力を向上するメリット

筋持久力を鍛えるメリットは、以下の通りです。

長く良い姿勢を保つことができる

不良姿勢の方がただ筋肉を鍛えても、姿勢が良くなることはありません。
姿勢は、短縮した筋肉のストレッチや、長期間の修正訓練と併せて筋トレをすることで改善されます。

筋持久力を鍛えることで起こる姿勢への好影響は、姿勢保持能力の向上です。
脊柱起立筋や大殿筋、腹筋群など、重力に負けずに姿勢を保つ筋肉(抗重力筋)により姿勢は保持されています。

これらの筋肉の遅筋繊維(長く、疲れにくい筋繊維)が発達することで、長く良い姿勢を保つことができることがわかります。

僕が患者(利用者)様の姿勢を修正する時も、必ず諸々の姿勢修正訓練と共に、筋持久力の向上を目的とした訓練を行っています。

疲労しにくい体をつくることができる

繰り返しになりますが、遅筋は疲れにくく、長く収縮が可能な筋肉です。
身体の遅筋が発達することで運動による疲労感を軽減でき、また遅筋は毛細血管が豊富であり、酸素呼吸を行うミトコンドリアという細胞小器官を多く含みます。

循環血液量の増加、酸素呼吸の効率化は、長時間の運動を可能にします。

高齢者でも筋持久力を高めることは可能か

若年者では、運動により筋持久力の向上が可能に思えますが、果たして高齢者では筋持久力を向上させることは可能なのでしょうか。

60歳〜70歳の1日の多くの生活を座って過ごす高齢者に対して、マシンによる筋力トレーニングを週3回、12週間実施した研究があります。12週間後、被験者の下肢の筋力、禁断面積が増え、遅筋及び速筋線維それぞれの増大が確認されました(1)

他にも、同様の研究、結果が多くあることから、どうやら高齢者においても筋持久力が向上することは間違いないようです。

高齢者の筋持久力向上の為のプログラム

では、筋持久力向上のプログラムは、どのように組むべきなのでしょうか。

筋トレによる筋持久力の向上

一般的な筋持久力向上のプログラムは、1RMの65%〜50RMの重量で、18回〜25回以上の高回数を行うことが推奨されています。(Fleckとkraemerより)

RMとは? 
Repetition(レペティション)maximum(マキシマム)の略で、 
ある重量が最大何回反復できるかを表す言葉です。 
つまり、 ベンチプレス100kgを1回挙上するのが限界の場合は、100kgが1RM。
アームカール10kgを5回挙上するのが限界の場合は10kgが5RMと表現します。
 1RMの60%を10回とは、1回挙上できる重量の60%で10回挙上することを指します。
例えばレッグプレスが50kgを1回挙げるのが限界なら、30kgで10回挙上します。

しかし、この負荷は若年者の筋持久力強化を想定されたプログラムで、高齢者にとっては適切な負荷ではありません。1RMの65~50%の重量は、高回数行うには重すぎるからです。

そもそも、高齢者の筋力向上のプログラムが1RM60〜90%で8~15回とされています。(2)
つまり1RM60%という重量は筋力向上のプログラムに近く、20回、30回も挙上できる重量ではありません。

東京大学教授であり、筋力トレーニングの権威である石井直方氏によると、筋持久力のトレーニングプログラムは、負荷を1RMの30%に設定するのが好ましいとのことです。

重量は1RMの30%とし、できる限りの高回数トレーニングを行いましょう。

有酸素運動による筋持久力の向上

遅筋の発達は、有酸素運動でも発達させることができます。

ウォーキングや、サイクリング、ハイキングといった長時間継続できる運動は、有酸素運動と呼ばれ、持久性の向上に使われます。長く運動を継続する為には、遅筋の発達が不可欠です。
適切な有酸素運動の負荷はこちらの記事で紹介しています。

筋持久力を鍛えて、活動的な毎日を!

高齢者の筋持久力について、紹介しました。
姿勢の維持や、長時間の行動に必要不可欠な筋持久力は、長時間、高回数継続できる運動で鍛えることができます。具体的なプログラムの内容も、今後当ブログにて紹介しようと思います。

参考文献

(1)Frontera WR, Meredith CN,Strength conditioning in older men: skeletal muscle hypertrophy and improved functionJ Appl Physiol (1985). 1988 Mar;64(3):1038-44.

(2)https://www.nsca-japan.or.jp/journal/13(7)47-51.pdf

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